自然が与えてくれた葡萄の宝石 wineの案内人…ブドウビジュー


これまでのメールマガジンからエッセイや
ご案内の一部をご紹介いたします
Vol.1
体験のご案内
Vol.2
一休.comワインセミナー
Vol.3
雲のように、水のように
Vol.4
秋の田園にて
Vol.5
イタリア 南国へ!
Vol.6
自然恵みに損失なし

Bedau Bijou 体験のご案内

やなせたかし色紙
だれでもみんな おんなじの
服をきるのは
好きじゃない
私は私
ひとりだけ
私ごのみの姿して
私がえらぶ
人生を
勇気を
もって
生きたいと
トンマながらも
考える

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わが酒の師渡辺さんが一人でカウンターに立ちつづける店・・・
30年近く通った湯島のバーの雪隠(せっちん=トイレット)に掛かる・・・
やなせたかし さん の色紙です。
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生前の三島由紀夫や池波正太郎に接し、店の名付け親は日本の酒の権威東大の坂口謹一郎先生・・・、養老孟司さんが酔っては場末の空を仰ぐバー。
そのような 偉大なバーマンとしての腕を持ち、 天下無双の酒のストックを持ち、 大人物や作家たちを客に持つのに、 こんなに優しく 謙虚さと古き良きエレガンス をもった人を他に知りません。 お酒に関する造詣と深い愛は若いどんなバーテンダーも及びません。
こんな人がいるから・・・風が吹こうが、矢が飛ぼうが、東京と東京の夜の街を捨てられません。 旅は好きですが、東京に戻ってきたいといつも思います。
トンマながらも我が道を行きたいと・・・・・
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若き日。ワインと本物のお酒に興味をもった駆け出しの私に信じられないような厚遇と好意で・・・ 真実を体験させてくれた偉大な先達たちや生産者、レストランなどで働く方ががたくさんいらっしゃいました!!
お金に代え難い機会を与えてもらい、貴重な経験をさせていただきました。 ワインとお酒と料理で人生観が変わりました。
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Bedeau Bijouは「実感」「人から伝わるもの」重視のワイン体験の場所です。
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決まったもの。自分が馴染んでよく知っているもの。人に評価されているもの。・・・
高いことにしろ、安いことにしろ、価格だけでワインをお求めの方には、 誠にご縁の無い つまらない店です。
お金を出せば、あるいは資格やブランドでおいしいお酒が体験できると思う方にも 誠にご縁の無い つまらない店です。
ゆっくりした気持ちで来ていただきたいと思います。 人生観の変わるような体験をしていただきたいと思います。

  1. 基本「ワイン時感・・・♪」

    約2時間 。お一人様 消費税込み12,600円 (12,000円)
    2名様~6名様まででご予約ください。
  2. 「熟成ワイン時感。奇跡のワインをロブマイヤーグラスで」

    所用約3時間 お一人様 税込25,000円(23,810円)。2名様から、ベストは4名様までと考えます。
    Bedeau Bijouが最も得意とする、東京屈指のコンディションの熟成酒や壮麗なオールド・ヴィンテージのワインをロブマイヤー・グラスで体験していただきます。
  3. 「至高のグラン・ヴァンの世界」

    至高のブルゴーニュ、ボルドー、ローヌ、イタリアワインなどのグラン・ヴァンを良心価格でたっぷりとご堪能いただきます。2名様から。6名様まで。
    所要時間 約3時間 。
    お一人様 税込39,900円(38,000円)から税込52,500円(50,000円)
    ※レストランへ出張ワイン会ディナーを設定することも可能です。ご相談の上金額を決めさせて頂きます。

お申込方法

  • 10日前までに上記コースよりご予約ご相談下さい。
    電話: 090-8590-4043
    Mail: nirei@yamani-wine.com

セミナー開講スケジュール

  • 木曜日~金曜日…18:30~21:00
  • 土曜日、日曜日…15:00~18:00
  • 予約2日前以降の欠席欠員分は、会費総額の当日ご出席者人数割りにて御願いいたします。もしくは、ピンチヒッターの方をたてて頂ければ幸いです。
  • 一般的にはこの内容と金額では体験して頂くことのかなわないエクスクルーシブな内容でそれぞれ特別なワインをご用意いたします。

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「一休.com」本社で ワインセミナー なんて自由闊達!

 
 なんとも自由闊達!そして、謙虚になんでも聞きましょう♪・・・という会社の雰囲気がすがすがしい、 ホテル&旅館&レストランの予約サイト「一休.com」の(株)一休 さんの赤坂の本社会議室で5月11日金曜日の晩に、 システム開発、マーケティング、宿泊レストラン営業などの社員さん25名様向けにワイン・セミナーをさせていただきました。 デザインチームの増田さんが写真を撮影していただき、フェイスブックにアップしてくださいました。 こんな感じで和気あいあいです!連続講座第一回目の晩でした。
講座の話しは『なぜフランス・ワインが世界一なんでしょう?』
という話しから始まりました。
セミナー風景
  1. フランス・ワインの他に無いほどの多様さ。プラスそれぞれの産地での微に入り細にわたる研鑽と深堀り。 一握りのとてつもないワインがフランスを世界の高みに上り詰めさせたこと。 訪問した最上の生産者との会話からうかがえる、<名刺や会社名なんて関係ない!マーケティングや大量生産も知ったことか!独立心と自尊心と探究心に基づく不断の努力の結晶>としての一握りのとてつもないワイン。・・・このワインに対する世界の王侯貴族、お金持ち、愛好家の絶大なる希求の強さがフランス・ワインの声望を築いた。
  2. <ブドウにストレスをかけるということ(環境)が偉大なワインを生む>ということをどの国の生産者よりも良く判っているのがフランス人(の優良生産者)。
    収量を落とす、灌漑をしない(水をやらない)、痩せた土地に植える、暑さよりも冷涼さ、ブドウ樹の若さよりも老練さ。 工業化した量産レトルトワインを造る商業主義生産地なら真逆の事をする重要さ。
    <<ぜいたく、ぬるま湯では子孫を残すことにブドウ樹のエネルギーが向かわない>>というワイン造りの真実を知ってください。
  3. 「果実」「甘さ」だけなら他でも! 酸とミネラルに縁取られた・・・燻し銀の「ハーモニー」。このことの洗練を誰よりも理解している。
フランス、イタリア、日本、中国、世界最高の料理文化には酸や苦みの大人の文化があります。 クラッシックのオーケストラでもピアノでもギターでも、強く弾く、甘く弾くだけなら並の才能でもできる。 ウィーン・フィルやベルリンと、それほどでも無い交響楽団B・・・同じ曲(=産地)、同じ音符と楽器(=ブドウ品種)だから,安い方の交響楽団Bでも同じ? なのでそちらで結構ですという人がいるでしょうか?
<深く揺さぶられるもの>・・・・古来の日本の言葉で、陰影。あるいは幽玄、深遠といった境地。そのグラス一杯の真実のためにすべてを捧げる造り手がいる。その層が厚いことが偉大なフランスのワインを生む土壌となっている。

エピソードや質問を交えてそんな私の思いをお話をさせて頂きました。 その他、私のレストランでの失敗談。じょうずなレストランでのワインの注文の仕方。ワインを深く理解し真実にたどり着くための先人の知恵。
ちょっとマジック・ショー風にグラスの形状とワインの提供温度、抜栓時間によるテイストの違いなども実地の体験いただき、 やさしい社員の皆様なので、やんや拍手でおだてていただきながら、たのしいあっという間の2時間でした♪

ワインは以下のような顔ぶれ
  • 2010年 トゥーレーヌ・ソーヴィニョン ヴァンクゥール ティエリー・ピュズラMag
  • 2009年 アルザス・リースリング アルベール・マン
  • 2010年 ブルゴーニュ マコン・クリュジーユ シャルドネ アラン・グイヨ
  • 2009年 リラック・ルージュ メラン・オデッセ
  • 2009年 シャトー・ラ・トゥール・ド・モン (マルゴー)
  • 2008年 ポマール クロ・ブラン アルベール・グリヴォ
  • 1983年 シャトー・ディケム(ソーテルヌ)
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今回は欧州オーストリーを代表する最高級クリスタル・グラス、ロブマイヤーの総代理店(株)ロシナンテ志村社長のご協力をいただき ウインザーホテル洞爺湖において開催されたサミットの際に500脚使用されたワイン・グラス、<バレリーナ>シリーズを提供いただきました。ワイン・グラス、<バレリーナ>シリーズ
ロブマイヤー・サロン (株)ロシナンテ 青山
www.lobmeyr-salon.ecnet.jp/

画像の美しいシェイプのグラスは、英国のバレリーナ、マーゴ・フォンティーンがティップ・トゥで立つ優美に姿をイメージしてデザインされた ロブマイヤーの<バレリーナ>シリーズの中でも、私が特に素晴らしいと思うグラスⅢ番です。
             (バレリーナⅢ Bedeau Bijou 販売価格18,900円)

宙吹きの技法で一つ一つ造られた極薄のグラスは、まるで空気のように軽く薄いのに、硬質で壊れにくいのが特徴で、その柔らかい触感は一度手にしたら忘れがたく、 そのアロマの豊かさは通常のワイン・グラスを数段上回るものがあります。 体験したことが無ければ判らない境地で、体験した日には、今までの数々のワインの無駄なシーンを後悔したくなるほど、鮮烈な幸福感に包まれます。

ロブマイヤの顧客リストは、エルトン・ジョンやバレエ・ダンサーのヌレエフ、カラヤンやリヒャルト・シュトラウス。 ディオールや香水のゲラン。メルセデスやロスチャイルド家。 スペインのイザベラ女王やグーデンホーフ・ミツコ。 ウィーンオペラ劇場、ザルツブルグ国立劇場、各国宮殿や大使館、ニューイヤー・コンサートの中継でおなじみのウィーン楽友協会ホールのシャンデリヤ。 など数え切れないほどです。日本の代表的なレストランでは、ロオジェやリストランテ濱崎、懐石小十など名店の数々がロブマイヤー・グラスを採用しています。

(Bedeau Bijou ブドウ・ビジューで販売。カタログをお届けいたしますのでお申し付けください。バレリーナを使った試飲もご予約のうえぜひご体験ください。)

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さて予約サイト<一休>。利用なさっている方も多くいらっしゃると思いますが、改めて拝見してみますと、ずいぶん幅広くお手頃なもの から、夢のプランまで選択肢がたくさん!ちょっと友人コマーシャルさせていただくと・・・ 気持ちの良い季節に最高な「テラス席のあるレストランのランチ」なんて特集には、 「表参道のブルガリ・イル・カフェのテラスで3300円~」 とか中目黒のビストロ・ド・エルのスパークリンワイン付き3000円なんてあります!
コンラッドやマンダリン・オリエンタルのアフタヌーン・ティーが税サービス込で3200円~ 旅館は女性に人気の熱海ふふや料理がいい長野の明神館なども。

ああ、こんな社員の方が足で開拓して企画を作られているんだな~と思いながら皆さんの歓談する横顔を拝見しました。
ホテル予約・旅館予約[一休.com]
www.ikyu.com/
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参加者のかたがたのワイン会感想の抜粋です。

営業企画Fさん
まずは、一言、とっても楽しかったです。
当初は皆でくるくるグラスを回しながら難しい話を聴くのだろうと思っていましたが、実際は全く違い、体験談を交えながらとても楽しくわかりやすくお話してくださったのですぐに引き込まれました。 フランス人の作るワインはどうしてこんなにも多種多様で奥が深いのか、どんな想いを 持って生産しているのかを知ると、想像していた以上に奥が深いものなのだと思いました。 実際に生産者と話をし目で見て、味わっていらっしゃるので、「このワインの生産者は、 タイユヴァンのオーナーさえも『タイミングの悪い男』と言ってしまう」や、「とにかく葡萄にストレスを与えて育てる。人間に例えると辛いことを沢 山乗り越えてきた熟女!」(かなり意訳してます。。)という話をきいてどんな人がどんな想いでどんな風に素晴らしい葡萄を、そして偉大なワインを生み出し ているかを知り、より一層ワインが美味しく感じました。 まるで、楡井さん自身が生産したワインのように愛が溢れていました。

マーケティング部(男性)
ただ好きなだけで知識などはまるでなかったのですが、実際に味わいつつ、奥深いワインの世界を垣間見ることができた素晴らしいセミナーでした。
同じワインでも、環境やグラスによってあれだけ様々な顔を見せるとわかり、驚きの連続でした。 また、一本一本に面白いストーリーや歴史があり、全然知らなかった視点からワインを見るきっかけになりまして、ますます好きになりそうです。

宿泊営業(女性)
とっても楽しく参加させていただきました。楡井さんのお話も奥深く、「おぉ~!」「へぇ~!」と驚きや感嘆の連続でした! ワインはもちろんですが、楡井さんのこれまでの実地での経験、人生にとても興味を惹かれました!
次回も参加したいです!!!!

宿泊営業アシスタント(女性)
とっても楽しいセミナーかつ初めてワインの講座を受講できたので非常に有意義でした。
学んだのは「産地や品種よりも、どのような作り手が作って、どれだけワインのことを考えた人が自分の元まで運んでくれるかで味は大きく変わる」ということでした


今後の要望

  • 「スパークリングワイン・シャンパン」 など、どのように楽しめるか教えて頂きたいです 。
    一休レストランでもスーパクリングワインが無料特典で1杯ついてくる店舗が多いと思うのですがどのように楽しめばいいのか、おうちではどういう風に楽しめばいいのか教えて頂きたいです。

デザイン(女性)
本当に至福の時でしたし、会議室でいただくにはもったいないとてもたまらない味でした。毎週あってもいいと思ったセミナーでした!ワインは知れば 知るほど歴史があって奥深いですね。ぶどうをわざと厳しい土地に育てるとか、生産者のこだわりなどとても詳しくご説明いただき勉強になりました。私は量産 型のデイリーワインばかり飲んでいたので、あのセミナーの後からどうも飲みたいという気がおきず・・とはいえ、はまると結構値がはって自分のお給料じゃ追 いつかないので今度からは少しご褒美程度でワインを楽しんでいこうと思います。

デザイン(女性)
最近、日本酒からワインに興味が広がってきたところだったのでとても良い機会でした。また、楡井さんが日本酒も飲まれる方だと聞いて、個人的には親近感を感じてしまいました。 自宅でワインを楽しむのもいいですが、レストランへ出かけたいな~と思ってしまいました。
グラスとワインの関係、ワイナリーの畑のお話などは興味深く、楡井さんのワインにまつわる実体験などはとても面白かったです。堅苦しくないスタイルで、ワイワイと楽しいセミナーで本当にあっという間の数時間でした。
今回グラスを提供してくださった、ロブマイヤーの方からも貴重なお話をうかがうことができて嬉しかったです。パンフレットに「宙吹き」という言葉 が載っていたのでどのような工法なのか質問したところ、自分が以前旅行先でガラス体験をしたものと、そんなに変わらないということで驚きました。
個人的に器に興味があるので、あのグラスのデザインと、薄さを形作るのはどれだけ大変な事だろうと想像をしたら気が遠くなりそうでした。職人さんがひとつひとつ作られているということで大きさが少しずつ違うというのがまた素敵だなと思いました。

インフォメーションチーム(お客様窓口 女性)
大学時代、ワインのクラスをいくつか履修しており、それがきっかけでワインに興味を持つようになりました。ワインクラスでは味やアロマ等も学びま したが、グラスによってこんなにも味に違いがでるのかを知らず、今回のセミナーに参加させて頂き、驚きの連続でした。また、栓を抜いたばかりのワイン・時 間をおいたワインの飲み比べも出来、とても勉強になりました。
楡井さんが仰っていたように、適当なワインを1000本ではなく、今後は産地・葡萄の品種にこだわりながら少しずつ知識を深めていきたいです。

営業アシスタント(女性)
普段から自分でセレクトすることが少ない中、知識が豊富な方のセレクトによる美味しいワインを飲み方も含めてご紹介いただくなんて、貴重な経験!夢心地でした。
大きな口のグラスは香り(アロマ)にかかわるということが一番印象に残りました。 次回も開催してくださるなんて、絶対に参加いたします!!

宿泊営業(男性)
ワインの知識とレストランの振る舞い方のアドバイスが勉強になりました。また、やっぱりワインは奥深く面白いと改めて感じました! ワインアドバイザーの資格も、面白そうだなと思っていたので、ワインについて考える良い機会でした。

システム(男性)
ワインは嗜好性の強い飲み物で、高いものが良いというイメージがあるなかで、比較的手ごろな値段で良いワイン・・・というと、素人では判別不能だと思いました。今回のように信頼できる玄人に紹介して頂く形がいいのでしょうね。(詳しくはないですが)個人的にイタリアやドイツのワインに興味があるので、次があるなら、イタリアやドイツのワインをご紹介いただければ嬉しいです。


ご感想と経験を生かして、提携先さま顧客さまの企業や店舗様でも、また ブドウ・ビジューにおいても、より楽しく興味深くワインと食のいろいろをご紹介して行きたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

Bedeau Bijou
楡井健一

 
 
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雲のように、水のように

 
雲の風景1・・・こだわらず、気宇壮大。
行く雲、流れる水のように自然そのもので、立ち去った後もいつまでも記憶に残る。すばらしいワインとその造り手を思い出すと、行雲流水の言葉が思い浮かびます。
古典的な姿ではなく、よんど型にはまらず個性的、自由奔放で革新的だったとしても、その精神とスタイルは清清としてナチュラルなものを秘めていなければ、おそらく一時の徒花(あだばな)で、長くは人の記憶にとどまることはありません。
私も若い頃、初めは飲みやすいワインからスタートして、本など読んで銘柄の幾つかを覚え、しばらくすると、いわゆるビッグで大柄なわかりやすいワインに興味をひかれるワイン好きの時代を2~30代の頃に通過してきました。

料理や音楽に関心の深い方なら分かるように、大柄で濃厚な味わいの料理を、そうそう長年食べ続けることはできません。強くて大仰(おおぎょう)な曲や演奏を、聴き続けるはできません。メディアを見ると今は何につけ濃厚さ強烈さや大きさを競う趣味の時代なのかと思いますが、本質的なものの味わいが分かる人は、洗練とエレガンスという感性を持つはずです。
これはいくら自由な時代だ、俺の趣味だと言っても、文化的、美的な世界においては、長きに渡ってそのような意識が築かれ蓄積されてきているわけで、古来最も贅沢な食の文化の花であるワインにおいても、またその真実の例外ではありません。

素朴な思い出話しに流れを修正しますと・・・・
私の祖母瀬之江(せのえ)は1999年9月9日という9ばかりの並ぶ日に亡くなりました。苦労と努力の連続の人生だったからでしょうか?
大正の時代、新潟から東京に丁稚奉公にでて苦心して自分の店を持った祖父の元に、
同じ越後から嫁ぎ共に苦労した祖母は、小学校しか出ていませんでしたが、生きる知恵に富んだ闊達な人で、一日三回、奉公人の方々や来客の分も含め、平均10人前後のまかないご飯を毎日いろいろと作っていました。祖母の作る煮物や汁物は、質素で素朴なものではありましたが、たいへん無駄なく揺るぎなく、洗練されたものだったと記憶します。
祖母はこの毎日の旅館の帳場のような家事のほかに、毎晩5時ころから晩酌する味にうるさかった祖父のために、いわゆる酒のつまみをてきぱきと作っていました。
揚げ出し豆腐。煮浸し。刺身。煮魚。野菜の煮付け・・・。
子供が見ていて興奮したのは、柳川を作る時です。生きたドジョウを買ってきて酒をさっと注ぎます。バタバタと大暴れの後ドジョウを酔いつぶしてから手際よく煮ていくのです。
大きくなった鶏をつぶして料理したこともあったと記憶します。
「いただきます」とは、ものの命を頂きますの意を実感しました。
そのほか、鯉こく、粕汁など酒飲みが喜ぶものをまめに作っていた記憶がありますが、祖父のあぐら座の上に座ってご相伴する私はあまり好きではなく、それがいかに美味しいものかに気づいたのは、祖母が亡くなって自分が40歳を過ぎてからでした。
この瀬之江の作る料理の味わいは、たとえ素朴なものや野趣に富んだものだったとしても、素材のもつ滋味を生かし、抑制の効いた、香り高い料理でした。決して豪華な材料や器ではありませんでしたが、いつもほっけ(素材を生かし勢いと温かみのあるいきいきとした感じを表す料理人言葉)があって、理屈抜きにうまいもので、つまるところ、エレガントでした。・・・体型は肝っ玉母ちゃんでしたが。
これら祖母の料理はレシピなど無く、感覚を頼りにやっていましたが、いま思うと何らかの価値感と情熱があったと思います。
ワインと料理の著述の才能に長けイタリアに移住したマット・クレイマーの言葉を終わりに。『私の見るところ、ワインの世界にも確実な視点や論拠があるのであって、とおり一遍に「好みの問題」、すなわち個人的な嗜好が左右する領域と片づけることはできない。このことはどうもきちんと理解されているとは思えない。平等主義とやらが蔓延している当節、とりわけアメリカの文化風土においては、結果的とはいえ他人の好みにケチをつけるのは具合が悪いことを、承知はしている。けれどもワインを理解するには、甲のワインが乙のワインよりも優れているとする価値感や立脚点そのものを、心得ておく必要があるのだ。
ワインとは根本的に人の心を満たす存在であって、その魅力は世代の違いや文化の壁を突き抜けている・・・
最上のワインがそなえる本質的な魅力・・・・その品質が、個人の好みとは対局にある根本的な価値と結びついているからこそ、かくも長きにわたって愛好家たちを心の底から満足させてきたのだ。
この点、ワインはダンサーに似ている。教養、年齢、振り付けのいかんを問わず、誰が判定するにしても、偉大なダンサーと認められるには「統御力、線、優雅さ、均整、流麗さ」といった公認の価値が表現できているか否かが決めてとなる。ワインもこれと同じで、ワインの固有の属性、つまり価値をそなえているかが判定・評価されるのだ。
『Making Sense of WINE』日本版『ワインがわかる』(白水社、塚原正章、阿部秀司訳)

空を流れ去る雲のようにいつまでも人の記憶にとどまるうつくしさを秘めたワインを、そのような流麗さのある上質を探したいと思います。
雲の風景2
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